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Last updated: 2010.11.28
いよいよメキシコのカンクンにおけるCOP 16およびCMP6が目前に迫ってきました(CMPは京都議定書の締約国会合です).巷では,この会議で決着することはないという見通しに基づき,関心度はあまりないようでもありますが,それでいいのでしょうか?
言うまでもなく,市場はその背景となっている状況,とくにルールに大きく左右されます.排出権関連は,排出権という商品自体がルールによって定義されるため,規制制度の影響をより大きく受けるわけです.
国際制度は,COPの場で決まっていきます.噂通り,今回,新しい議定書や条約の改正がなされる可能性はかなり低いですが,COPやCMPは,必ずいくつもの「決定(decisions)」をします.これが,次の方向性,ステップやプロセスを規定してくるわけです.神が宿るという詳細を規定するケースもあります.
ここで,とくに日本のステークホルダーの視点から,どこに注目すべきか?という点を考えてみましょう.
前回のコペンハーゲン会議までを簡単に振り返ってみましょう.
気候変動枠組条約で打ち立てられた「共通だが差異のある責任」の原則の下,できたのが京都議定書です.これは歴史的に責任のより重い先進国から規制を課すことで対策を強化していくという枠組みですね.そして現在では,その先進国の規制のさらなる強化と,途上国の対策の強化が,メイントピックであるわけです.
京都議定書は,2012年末でexpireしてしまうような条項はなく,第2期の目標設定交渉がモントリオール会議から始まっています.一方で,途上国や米国も含んだ(京都議定書ではなく)気候変動枠組条約の下,新しい強化対策枠組みも,バリ会議から交渉されています.
この2つの交渉プロセスは,それぞれAWG-KP,AWG-LCAと呼ばれ,バリでの合意では,一本化して交渉するようなものとは規定されていません.ただ,先進国は,昨年末のコペンハーゲン交渉において「一本化」を要求し,それが途上国の「話が違う」という強固な反対で,実現しなかったという経緯があります.途上国は,あくまで先進国は京都議定書における規制強化をまず進めるべし,という主張で,一方で自分たちはボランタリーな目標のプレッジを行うようになりました.
コペンハーゲン会議は,その期待の大きさから100カ国以上の首脳が集い,何らかの結果を出す必要に迫られました.時間がない中,首脳たちは集い,徹夜の交渉の末に「コペンハーゲンアコード」を採択したわけです.
このコペンハーゲンアコードは,とりあえず交渉を進めていくときのベースとなることを,トップダウン的に決めることを狙ったものですが,その前に合意できなかった大きなポイント(一本化の話など)までを,決めることはできませんでした.したがって,先進国の目標や途上国の目標設定などは行われず,ボランタリーにプレッジするにとどまっています.当面の運用のベースという位置づけと考えることが妥当だと思います.
一方で,日本では,このような「ボランタリーなプレッジ」に基づく国際枠組みができあがってくる... という観測か期待があります.京都議定書タイプの法的拘束力のある仕組みに基づいた枠組みは終焉するということですね.
ただ,国際交渉とくにAWG-KPは,まさに京都議定書の第2期の数値目標を決める交渉プロセスで,法的拘束力をもった合意となることが前提となっています.AWG-LCAの方は(途上国に関しては)ボランタリーなプレッジベースとなる可能性はありますが,先進国もそうなるということは考えにくいでしょう(それは「後退」を意味するとみなされます).
EUは,途上国の頑なな態度をいやというほど体験しましたので,京都議定書の第2期をまず用意して,途上国(や米国)に関しては,いかに実質的に実効性のある仕組みをつくれるか... に方向性を持ってきているようです.おそらく(途上国向けに)次のより強化する交渉プロセスを開始する合意を採択することなどが,目指す点ではないでしょうか.
これらの交渉が,どのような方向性に収束していくのか,が,カンクン会議の焦点でしょう.ただ,先進国もプレッジ&レビュータイプに戻るという期待(?)は,カンクン会議がまったく合意の方向性を見せない場合にのみ,現実性を帯びてきます.ただそのときは,(京都議定書のみならず)気候変動枠組条約までもが求心力を失う世界を意味しています.条約で途上国を納得させるためには,先進国も「前に行く」(とみなされる)ことが必須ですので.
AWGsは,おそらく来年のAWGsで決着を付けるという合意がなされると思います.その意味では,勝負は来年かもしれませんが,その「方向性」は,カンクンで示されるのではないでしょうか.
【案内】 昨年好評だったCOPの報告会を今年も開催します(12月21日).詳しくは PEARのWebサイト をご覧ください.
[この文章は,ナットソースジャパンレター 2010年 12月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]