Upper Image
Climate-Experts Logo

ウインドウ内の余白部分を左クリックすると 【メニュー】 がでます. あるいは ページ下の リンクボタン をお使い下さい.
Netscape 4 の場合,再読込ボタンが機能しないことがありますが,その場合 url 表示窓をクリックし, Enter キーを一度打って下さい.

Last updated: 2009.05.09

排出権などにかかわる言葉の使い方

ここのところ,地球温暖化関連で,言葉の使い方がかなり「勝手に(ひとりよがりに)」なされているような気がします.

これは二種類の点で注意が必要となります:

これらの例をいくつか見てみましょう.

「カーボンフットプリント」 (carbon footprint)

日本ではLCA CO2排出量計算に基づく環境ラベルのようにとらえられていますが,元々はCO2排出量,とくに直接排出量を指します.ですので,「製品の」カーボンフットプリントとしての環境ラベルなら意味が通りますが,主語が個人や企業などであったら,ふつうは,直接使用するエネルギー消費(燃料や電力)からのCO2が主であり,使う製品を作る際のCO2などはマイナーな消費となります.海外では通常はこちらで使われるわけですね.

「カーボンオフセット」 (carbon offset)

本来は,ある活動からの排出量(上記のカーボンフットプリント)を,別の GHG削減活動で相殺することですね.「相殺(オフセット)」とは,地球大気からの削減であるべきです.なぜか日本で認められている「日本の目標達成に使う」とは,その分,日本が余計に大気に排出できることを意味していますので(すなわち大気から減っていません),外国ではそれをカーボンオフセットと称する例はおそらくないと思います.京都目標のための日本の排出量のオフセット(のための寄付金)という位置づけならわかりますが,その場合には,あなたの活動のオフセットにはなっていないわけですね(両方のオフセットとするとダブルカウントになります).

「排出量取引」,「排出枠取引」 (emissions trading)

取引されるものは,「排出許可証(=排出権)」です.「排出量」という物理量を取引するわけではありません.また,「排出目標(=排出枠?)」自体を取引するわけでもありません.排出権を購入したからといって数値目標の値が変化するわけではないのです.その意味で,わたしは排出権取引という言い方がもっとも誤解がすくないものと思っています.

また,通常は 排出権取引は,規制制度のことを指します.排出「許可証」ですからね.日本のように CDMから人々の知るところとなって,かつ いまだに明確な規制制度がない状況では わかりにくいかもしれませんが.

「排出権」,「アローワンス」,「クレジット」 (emission permit, allowance, credit)

広い意味での排出権として,キャップアンドトレード型規制制度の下での排出権(アローワンスと呼ばれることが多い)と,ベースラインアンドクレジット型制度の下での排出削減クレジットがあります.クレジットは「削減量」に対して事後的に与えられる排出権であるため,EUAやAAUのことをクレジットと呼ぶのはおかしな使い方です(EUA: EU ETSの排出権).

「キャップ」 (cap)

排出権取引制度とは,本来は規制制度であり,それに総枠を課すことができる制度をキャップアンドトレードと呼びます.この場合の「キャップ」とは,排出総枠のことであり,個々の主体に課した排出目標のことではありません.ニュアンスとしても,割当の結果としての総和としてのキャップというより,まず環境的な観点から全体枠であるキャップを決めよう,という気持ちがあるのかもしれません.したがって,全量オークション方式の排出権取引制度もキャップアンドトレードの一例で,その排出権もアローワンスと呼ばれます.

「承認」,「検証」,「認証」,「認定」 (approve, verify, certify, accredit)

これらの用語はしばしば混同して用いられます.制度によって使われ方が異なることがあるでしょうが,一般に「検証」とは定量評価=数字が正しいことを証明することという意味で使われるようです.「認証」は手続きの確からしさの証明ですね.「認定(accredit)」は他のものとは異なった意味を持ちます.認証機関を認定するといった使い方ですね.資格に対して用いられます.ちなみに,CDMのプロジェクトと認められる場合には「登録(register)」と言います.

「温室効果ガス」,「気候変動枠組条約」 (greenhouse gas, UN Framework Convention on Climate Change

地球温暖化ガス,地球温暖化防止条約という言葉をときどき見ます.ちなみに,温室効果ガスとして何を含めるか?という定義は IPCCとUNFCCCで異なります.後者ではモントリオール議定書で規制されているCFCs/HCFCsは含まないのですね.また,気候変動(climate change)の使い方も異なっているのをご存じでしょうか?後者では人為的起源のものを対象とします.

ついでに,climate change はそのままでは気候「変化」です.変動というと fluctuateというニュアンスがありますが,climate change の change はそうではなく大きく気候系がシフトする(変化してしまう)ようなイメージですね.中国語では正しく気候変化と言います.

脱線ついでに,United Nationsに関して,国際連合は名訳ですが,本当は中国語の「連合国」ですね.United Statesが合衆国ではなく合「州」国であることは,昨年末の選挙をみていても実感するところでしょうか.



[この文章は,ナットソースジャパンレター 2009年 4月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



Move to...

Go back to Home
Top page

Parent Directory
Older Article Newer Article