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Last updated: 2007.01.01
ナイロビでのCOP 12,COP/MOP 2が終幕しました.そこでこの会議をすこし振り返ってみましょう(この原稿はナイロビで書いています).
最大の成果は,アフリカでの会議であったこともあり,温暖化のインパクトや適応措置に関した大きな進展があったことでしょう.5カ年のナイロビ・ワークプログラム,適応基金,特別気候変動基金などです.
一方で,みなさんの関心は,おそらく「将来の枠組み」と「CDM」がどうなったか?ということに集中するでしょう.
「将来枠組み」に関しては,手続き的には ・将来の共同行動に関するダイアローグ(気候変動枠組条約側),・先進国の次期目標(議定書側),・議定書の最初のレビュー の3つのトラックがあります.加えて,非Annex I国の自主参加手続き導入に関するロシア提案,ベラルーシュの自主参加提案が関連します.
結果としては,明確なものとしてわたしが注目したいのは,(あまりみなさんの注意を集めなかった)「ベラルーシュの自主参加」が認められたことです.これによって,議定書(のAnnex B)は最初の改正がなされ,ベラルーシュがAnnex B国の仲間入りを果たしました.目標水準は当初提案のマイナス5%からマイナス8%にすこし厳しくなりましたが,「ドアを開けた」ことに間違いはありません.同種の「手続き」の導入を提案したロシア提案は,G77/China(途上国連合)の強硬な反対で議論することすらできなかったのですが,今後は5月にワークショップが開かれることとなっています.
わたしのような「古株」にとって,途上国の自主参加条項は,1997年12月10日深夜,京都議定書の最終日の最後まで残っていた提案であったわけですが,それがやっとあのときから再び顔を出してきたか...という点で感慨無量です.あのときは,途上国への根回しの時間がなく,排出権取引条項を認めさせる代わりに,議定書から落とさざるをえなかったいきさつがあります.これは当時のエストラーダ議長の英断でした.それがなければ京都議定書は日の目を見なかったでしょう.
議定書のレビューといった「正門」や,手続き導入提案といった「通用門」でもなく,いわば「裏口」かもしれませんが,ベラルーシュは間違いなくそのドアを開けたと言えるでしょう.
ちなみに,議定書見直しは,2年おきに行うことが(事実上)決まり,COP/MOP 4では新たなコミットメントにつながる議論はできないとされました.
先進国の次期目標は,3段階のワークプログラムができ,排出削減に関する「ポテンシャル」,「方法」,そして「コミットメント」の順番で議論/交渉がなされていきます.いつまでに決着を付けるかという明確な年は指定できませんでしたが(米国の中間選挙の結果を受けて,米国次期政権をにらんだ考えもはたらいたのでしょう),「2013年から」そして「現状より厳しく」という点は決まっていると言えるでしょう.徐々に...ではありますが,未来の方向性は明らかになってきています.
もうひとつわたしが注目したのは,「ダイアローグ」の場での新しいブラジル提案です.これは,森林破壊を食い止める国内政策で実績をあげた国に対するインセンティブを与えるファンド創設提案です.先進国の拠出という点で,ずいぶんムシのいい提案にも思えますが,環境面ではなかなか魅力的でもあります(非再生可能バイオマス利用を減らすCDMに反対さえしなければ,ブラジルの言うことに説得力があるのですが).この提案だけでなく,ダイアローグの「成果」をにらんだ提案を,そろそろ日本も出していくべきでしょう.わたし個人のアイデアとしては,「GHG排出原単位インベントリー報告制度創設」なのですがいかがでしょう?
CDMにおいては,プロジェクトタイプあるいは方法論の適格性という点で,新設HCFC 22プラント,CSS(炭素地中貯留),非再生可能バイオマスの転換と,どれも今回での決着ができませんでした.これはどれもブラジルの反対によるところが大きいのですが,(ロシア提案への反対も含めて)「足を引っ張る」タイプの考え方ではなく,「やりたいことを伸ばす」タイプの考え方で交渉を行ってもらいたいものです.
CDMでは,指数関数的に発展してきている実績は大きく評価され,むしろ今後マネージできるか?という懸念が出されています.小規模CDMの,とくに省エネタイプの上限値を4倍(60 GWh/年)に上げることが合意されたのは大きなポイントでしょう.遡及クレジット適用期限も,プロジェクト登録申請段階で3月末まで延びました.
フィゲーレス氏がCDM理事会メンバーになったことは大きな前進ですが(彼女もかなりの古株ですごく熱心な方です),逆にバイオディーゼルや非再生可能バイオマス転換,HFC23の大きな障害となっているM氏が(オルタネート・ステータスですが)残ってしまいました.
プロジェクト分布の地域偏差や,貧困地域に資するプロジェクトタイプが少ないことは,場外でもかなり議論されましたが,抜本的な解決策は打ち出されませんでした.(日本にとって)公的資金やODAの重要性を主張するチャンスでもあったはずですが,それはなかったようです.
排出権市場の発展は,EU ETSの第2フェーズへの移行,CDMの拡大などを背景に今後も期待されていますが,一方でホットエアーが大量に市場に出回ると,排出権価格は暴落します.そのあたりが,2007年からはじまる京都メカニズムの適格性審査とともに,ホットエアーを買おうとする国が出てくるか?という点とあいまって注目されます.
来年は,いよいよ第一コミットメント期直前のCOP/MOPとなります.日本の目標達成計画改定もありますね.その意味で,世界はいよいよギアをサードに入れることとなるでしょう.場所はバリ(インドネシア)ですので,みなさん,ご自分のやりたいことを,ぜひ,サイドイベントなどで主張しに行きましょう!
さいごに...2007年1月に,アル・ゴアの映画「不都合な真実」が上映されます.ぜひご覧ください.わたしはナイロビ行きの飛行機の中で3回観ました.帰りにも同じくらい観るつもりです.
[この文章は,ナットソースジャパンレター 2006年12月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]