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Last updated: 2005.10.29 

ロシアの批准と排出権価格

下院3委員会の承認を経て,いよいよロシアの議定書批准が間近になってきました.ロシア批准はとりもなおさず(90日後から)京都議定書が発効し,米国・豪州をのぞくほとんどの先進国において,数値目標の遵守が義務となることを意味するわけですね.排出権市場もそれなりの反応をしているようです.COP 11(欧州の順番)が,COP/MOP 1となるのは確実となってきました(COP 10ではその準備が主課題となるでしょう).

ロシア批准がこのタイミングとなった背景には,当然,WTOとのかかわりや,テロの問題などの「外的」なイシューがおおきくかかわっていると想像されます.ロシアが見ていた相手は,(米国大統領選を待たなかったという点から)やはりEUであったといえるでしょう.

気候変動問題の視点から,ロシア批准のタイミングの点を考えると,やはり京都メカニズム参加資格の点が思いあたります.わたしの知りうる限り,ロシアの政府関係者やRAO UESの関係者で,この問題をきちんと理解している人がおらず,以前はかなり危惧したものでした.その一方で,欧州委員会の担当者はこのことを十分に理解していることは確認できたため,少なくとも彼らが,これをロシアにきちんと伝えていたことは容易に想像されます.

京都メカニズムにフルに参加するためには(すなわち排出権を海外に販売するためには),国内排出源などのインベントリーを,IPCCのガイドラインなどに沿った形で,きちんと作成できる体制を整備しなければなりません(基準年排出量の確定も必要です).現時点では,ロシアはそれがかなりできていないのです(ちなみに日本もまだ不十分です).レジストリーの整備も必要ですが,これはコンピュータシステムですので,比較的容易ですね.

タイミング的には,2006年末までにその関連書類を提出し,2007年一年間かけて,インベントリー専門家や遵守委員会によって,これに関する審査が行われます.合格して始めて,2008年から排出権取引制度などに参加することができるわけです.テクニカルな点ですので,政治力でどうこうできる問題ではないでしょう.

ロシアは統計情報などが未整備であり,合格するまでには(単純にお金をかければいいという問題ではなく)かなりの時間も要するでしょう.相当数の専門家のサポートがないと,むつかしいと想像されます.実際,相当数の専門家をそろえられるのは,米国を除けばEUのみでしょう.

そう考えると,5月にプーチン大統領のポジティブな発言があった前に,あるいは今回の閣議決定の前に,EUはそのインベントリー整備の持つインプリケーションを明確にロシアに伝え,現時点ならまだインベントリー整備が可能であるが,あと半年経てば,それはほぼ不可能になる… といったことを伝えているかもしれません.そして,批准の条件の一つとして,そのサポートを申し出ていると考えられます.

もっともこれは「憶測」でしかなく,欧州委員会に確認をとっていません

これが実施されようとしているかどうか?は,今後の排出権市場の価格において,きわめて大きなインパクトを持つでしょう.ブエノスアイレスで確認しようと思っています.また,誰かご存じでしたら教えてください.

なお,その意味もあり,日本としてはロシアからの排出権を「あて」にすることは,かなり大きなリスクがそこにあります.カウンターメジャーとしてのCDMをさらに促進させる必要があるでしょう.少なくとも,年間1億トン程度なければ,計算上,話にならない...と言えるでしょうね.早期戦略の策定が望まれます.


[この文章は,ナットソースジャパンレター 2004年11月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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