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Last updated: 2002.10.06  

排出権市場の発展形態 ― 市場のリンケージ

排出権はその派生商品を含めて商品として市場を形成します.現状でも北米地域では規制がない状態でも 取引が行われていますが,将来は,政府規制の下で,明確な定義づけのされた商品として,市場が発展していくでしょう. では,いったいどのような発展形態をとるのでしょうか?

このときにキーとなるのは,異なった規制フレームワーク下の排出権市場の「リンケージ」です. ここでいうリンケージとは,お互いの排出権になんらかの「互換性」を持たせることを意味します.

これにはいくつかの段階(グレード?)があって,

などが考えられるでしょう.市場は大きい方が望ましいわけですね. したがって,このようにリンケージを通じて拡大していくにあたって,制度設計上でなにを「共通化」すべきで, なにはその必要がないかを,いまのうちから検討しておかなければなりません.個々の制度ができあがってからでは 難しいでしょうから.

たとえば検討項目としては,モニタリング・報告制度,遵守強制制度,初期割当方法, 目標の種類(例: 総量目標と原単位目標),レジストリー制度,制度の互換性に関する包括的な合意のあり方などでしょう. 規制当局間のコーディネーションがなくとも市場の方で自律的に結びつくということもあるかもしれません (この場合はひとつの制度下の 1 トンは,他の制度下では1トンとはならないかもしれませんね). その他,Gateway の設置,共通通貨としての CERs の活用,クリアリングハウスや Carbon Repository の設置などの 視点も加わります.

いま,EU 域内で議論がなされているものの大きなポイントは,加盟国間の割当すなわち数値目標の方法の 差異に関するものです.ただ,日本と繋げる場合や Annex B 間取引においては,この点は大きな障害とは ならないような気がします(各国の自主性の裁量の幅が大きい=コーディネートは不可能). もっとも,たとえば罰金の水準に関しては論議があるかもしれません.モニタリング制度は, ある一定の精度の確保は必要でしょうね.

特に日本にとっては,2005 年からのステージにおいて,最初から EU 市場と繋げることが重要となります. 単純にトップによる政治合意だけで機能するというわけではありません.

より難しい課題として,米国でできるであろう市場とのリンケージに際しては,京都議定書の改正が必要になるでしょう. 問題は,どのような点を改正すればよく,加えて米国が京都側に戻って来やすい方法を考える必要があるということですね. 国とその中の(その国のレジストリーにアカウントを持つ)民間企業との関係も単純ではありません (ちなみに今の制度でも,米国企業が締約国内レジストリーにアカウントを持てば,取引に参加できます). 逆に言うと,かなり想像力を羽ばたかせる余地があるということです.別の「商品」が国際化していった 過程を追ってみるのも参考になるかもしれません.

一例として,京都の時は米国国務省,現在では IEA の Jonathan Pershing が,同じく IEA の Richard Baron と書いた ペーパーと発表資料から,非締約国(米国)との市場のリンケージに関わる図を紹介してみましょう (IEA の見解ではありません).みなさんも想像力をたくましく考えてみて下さい.

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[この文章は,ナットソースジャパンレター 2002年 9月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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