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Last updated: 2002.09.01  

発展途上国と米国の参加問題へのアプローチ

マラケシュ合意が成立し,国際交渉の次の大きなヤマは,第 2 期をにらんだものと言うこともできます. 京都議定書では,Annex I 国の 第 2 期の目標の交渉は,2005 年までに開始することになっています. すなわち COP/MOP 2 となるであろう COP 10 から,この議論がされると考えておいた方がいいでしょう. そしてその決着は,2007 年末まで,すなわち COP 13 = COP/MOP 5 には決めなければなりません.

加えて,おそらく議論に上るのが,発展途上国と米国の参加問題でしょう. ここでは,その「プロセス」として,どのようなものが考えられるかを,考察してみましょう.

京都議定書は,本体の改正および Annex B の改正という手続きを経て,発展していくものと思われます. コンプライアンス系手続きの法的性格の問題,たぶん韓国の目標設定,第 2 期のコミットメントの目標などが, それに該当します.

ところが,中国などの途上国や,「京都」に異常なまでの頑なさで対応している米国など,京都議定書の中で, 枠組を発展させていくことが難しい国々も多いのが実情です.その場合のアプローチとしては, どのようなものがありうるでしょうか?

ひとつの方法は,別の議定書を作成することです.ヒューストン議定書などができたら, 米国だって参加するかもしれません.もうひとつの方法は,気候変動枠組条約の改正です. 米国や中国もすでに条約の締約国ですし,その意味でバリアは低いでしょう. また,条約は,排出量の報告制度や,排出権取引類似の概念なども仕組まれているため, あとは「(何らかの)目標」と,「その運用則」さえ設定すれば,京都議定書もどきができあがるわけです. 既存のコミットメントが十分であるかどうかを審査するプロセスも含まれています.

ただ,いくつかの点で,京都議定書とは異なった取り扱いが必要でしょう.すなわち, 発展途上国に「自ら目標を設定して入ってきてもらう」ためのキャロットと, リスクへの懸念を回避する仕組みを取り入れる必要があります.

発展途上国が,もし自ら目標設定をして,このスキームに入ってくるとしたら(強制的加入は非現実的です), どんなインセンティブがありうるでしょうか?もちろん,温暖化問題に寄与したいという純粋な気持ちのほかに, (1) 排出権取引への参加,(2) (トロピカル)ホットエア の獲得,の 2 つが大きいと思われます. ホットエアの存在は,環境面の問題というよりも,その国に対する補助金としての色彩が強いことには 留意が必要でしょう(環境面で問題となるのは個々の国の目標ではなく,全体の排出可能量です).

途上国の懸念材料としては,(a) 経済成長への足かせになる,(b) 不遵守時のペナルティー,などがあるでしょう. これらは,すべて,何らかの方法で対応可能なものばかりです.たとえば原単位改善目標,弾性値目標や ペナルティーなしの目標などが考えられています.

言い換えると,これらをうまく「デザイン」することで,あるいは旧共産圏の国々が大きな便益を受けることを 実証することで,発展途上国の参加を促進することになるわけです.ただ,忘れてはならないのは, 発展途上国は,きわめて多様な国々の集団であり,その多様性にいかに対処するか?という点です. 彼らの重視する「公平性」を,これらの国々の間で担保しようとすることは, (先進国との関係同様)けっして簡単ではありません.おそらく目標設定方法として,複数のものから 選択する自由を与えるメニューアプローチなどが落としどころでしょう.

さて,それでは米国はどうでしょう?第2期の目標の交渉が始まる 2004 年末に, 次の大統領として誰が選出されるかに,大きく関わってくることはまちがいないでしょう. もし,頭ごなしに No 京都を唱えることをしない大統領になった場合,「ビジネス機会」という殺し文句が, キーとなることは疑う余地がありません.

その場合,京都を拒否する国を仲間はずれにするか,あるいはそんな国にもできるだけ機会を与えることで 関係をつなぎ止めておくか,という戦略には大きな分かれ道があります.日本は明らかに後者を選択しますし, EU もそれに同調せざるを得ないでしょう.

その意味で,いかにして排出権などの市場に(いずれできるであろう)米国の市場とのオーバーラップを 設けていくか,が重要な課題となるでしょう.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2002年 8月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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