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Last updated: 2007.07.07
今年のドイツ・ハイリゲンダムサミットでは,昨年の英国・グレンイーグルズサミットからさらに地球温暖化問題の重要性が高まり,来年の洞爺湖サミットでは,おそらく今年よりもより一層重要度が増すでしょう.
さて,今回のサミットの結果を,どう理解すればいいのでしょうか?
まず言えることは,温室効果ガス排出量に関して,2050年というタイムフレームで,地球全体で「少なくとも半減」させるとした目標を,日本を含めた先進国は(米国は「?」ですが),しばらくは掲げ続けるだろう,という点です.長期目標であるが故に,そう簡単には(少なくとも10年以上は)旗を降ろすというようなことはできないでしょう.
また,「世界全体で」半減ということは,「先進国は」およそ70%程度減らさなければならないという結論も,それから自然な帰結として導かれることは,明らかでしょう(洞爺湖では明示されるかもしれません).現に,EUとカナダは,そのことを6月4日の会談で謳っていますね.
長期的な点に加え,6年後に迫った2013年以降の枠組みに関してはいかがでしょう?意外と見落とされている点は,共同声明で謳われた
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という点です.日本では,「京都議定書は2012年末で
終了し,その後,APPのような全く異なった制度でセクターアプローチなどに移行する」というような「あらぬ期待」を抱いている人が多いような気がします.APPのような数カ国のパートナーシップが,京都議定書に取って代わるようになる...というような非現実的なことは,これで明確に否定された,ということがわかるでしょう.
さらに付け加えれば,京都議定書は明らかに2013年以降も継続するようにできています.実際,現在正式なものとして動いているAWGという交渉プロセスは,議定書の「Annex Bの改正」です.それはとりもなおさず,京都議定書の本体は今のままで継続し,数値目標だけが第2コミットメント期用に変更される,という前提です.
実態として,発展途上国に対して,京都議定書もしくは類似の国際的枠組みにおいて,新たなコミットメントを課す...というプロセスは,すべて途上国側の反対で「交渉を始めることすらできない」状態が続いています.
もういちど,ハイリゲンダムサミットの共同声明にもどると,この点に関して,
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という表明がなされています.これは,おそらく発展途上国を含んだ新たな制度的枠組み(たとえば京都議定書の「弟」)をつくるプロセスの開始を,まず少数の大排出途上国を交えて2008年に合意し,続いて2009年には気候変動枠組条約のプロセスにおいて,それを正式なものとする,という意思表明かと思われます.
もちろん,これは先進国フォーラムであるG8のみの宣言であって,中国やインドが,これに組するという保証は全くありません.むしろ逆側のスタンスを表明している状況にあります.
ただ,2008年という時期の表明があったということは,洞爺湖サミットでリーダーシップをとることを求められている(と自覚している)日本政府とすれば,かなり積極的な二国間外交を,欧州諸国などの協力を得ながら実施していく必要性が生じたことを意味するのでしょう.
もうすこし,「日本」の今後の方向性を考えてみましょう.最近の国際的情勢の中で,好む好まざるの点はともかく,温暖化政策の主導権は,明らかに役所から官邸に移ってきています.上記の2008年の洞爺湖サミットとその前後の途上国主要国との二国間交渉もそうですが,国内ではどのような動きとなっていくのでしょうか?
ハイリゲンダムサミットの共同声明には,
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という表現もあります.これは,途上国も相応の責任があるということでもありますが,同時に先進国にもより大きな責任があり,かつその責任を果たす行動は,「その能力があるかどうか?」という点に基づくということです.
さて,日本はこの点でどうでしょうか?前述のように,国際的にリーダーシップをとらなければならない,というプレッシャーの中で,かつ「資金力」や「技術力」などの面において,日本はさらなる行動をとる能力がない...ということを主張できるでしょうか?それはありえないですよね.むしろ,先陣をきって,行動を起こしていくことが世界的に期待される...のは間違いがないでしょう.
そう考えると,自らの過去の努力に寄りかかって,自分の努力はもうたいしてできないが,途上国にはきちんと規制枠組みに入って,世界の排出量半減に向かって努力をしなさい,と主張することは,ほとんどできない相談でしょう.
日本企業には,そのような日本のおかれている国際的な状況を把握した上で,今後のリスクを評価し,行動に移してもらいたいものですね.
[この文章は,ナットソースジャパンレター 2007年 7月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]