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Last updated: 2005.10.29 

大綱の改正に向けて(中間とりまとめ)

8月4日に産構審,6日に中環審の「中間とりまとめ」という形で,現時点で大綱の改正に関する主要二省庁の案が出てきました.本当は,今年度中に,来年度からの制度(追加的対策)を策定かつそれが運用できるための準備を行わなければならないのですが,いまだに「ジャブ」を打ち合っている様相です.とはいえ,いろいろ目に付くところも見え隠れしますので,ちょっとそれらを眺めてみましょう.

まず,追加的対策の「必要性」に関するところですが,これは両省とも認めるところですね,2010年時点の見通しは,全GHGで,基準年比プラス3.7?5.5%(経済産業省),プラス6.2?6.7%(環境省)となっています.シンクでたとえ3%程度削減できたとしても,マイナス6%の目標からは,少なくとも10%程度は足りなくなるということです(わたしは少し甘めの推計かと思いますが).

今回の改正の大きなポイントのひとつは,経団連および各業界団体の「自主行動計画」をどうするか?という点でしょう.両省のトーンは異なりますが,いずれにせよ,現状だけでは不十分で,透明性,信頼性,目標達成の蓋然性に関する課題について可能な限りの進展を図る(経済産業省),協定化と客観的な専門的機関によるレビュー(環境省)などが謳われています.気になるのは専門機関のレビュー項目として「各業種目標の妥当性」が入っているところでしょうか.

これとかかわってくるのが,「国内排出権取引制度」ですね.経済産業省はこれに関しては明言を避けています.EU ETS, US EP Act 1605(b)を諸外国の取り組みとして提示してあるのみです.ただ,業界ではなく個別事業者レベルでの排出量公表や取り組みに関して,検討していくべきと謳っていることが,伏線になっているのかもしれません.

一方で,環境省はより踏み込んできました.従来から企業レベルのGHG算定・報告に関する取り組みは進めていましたが,もう一歩踏み込んで,自主的な排出権取引制度を提案してきました.「自主的」と言った場合,いろんな側面があり注意する必要があるのですが,環境省案では

などとなっています.対象施設,割当方法,不遵守時の措置などはあとで検討ということですね.英国型をイメージしているわけでしょうが,これが比較的フルスペック的に導入されることを想定しているのか,昨年度行われた試行事業のアップグレード版的なものとなるかは,現時点では不透明です.

加えて,EU ETSとのリンケージも考えているように見えるのですが,これは単にレジストリーの整合性程度のイメージのようです(経済産業省も).EU ETSはかなり厳格なフレームワークに基づいていますので,おそらく,環境省案程度では,EUは制度をリンクさせることを許してはくれないでしょう(欧州委員会は,規制のmandatoryな性格,目標水準,遵守関連措置を非常に重視しています.これは英国制度ではなく,米国SO2アローワンス取引制度をお手本としたことからもわかりますね).

かなり経団連などに「配慮」した提案になっています.実際のフレームワークとして機能させるためには,それ以外にも,目標設定におけるポリティカルな面,バウンダリーの取り方などのテクニカルな面などで,いろいろ無理が生じるような気がします.排出権取引が「規制フレームワーク」としても「市場という意味でも機能するためには,堅牢な遵守システムが必要である,という認識は低いようです.ただ京都メカニズムのところで,対象施設指定型ETSもすこし出てきますので,「その後」を考えているのかもしれません.

すくなくとも,EU ETSとつなげることを想定するのなら,それ相応の目標水準(総量)や堅牢な遵守システムといったデザイン上の点を十分に考えておく必要があります.

次に「京都メカニズム」に関してはどうでしょうか?国内措置の不足分を補う手段としての認識はなされるようになってきて,特に政府としての活用方針,計画的な調達,そのための予算的対応の必要性が明示されたことは進歩でしょう.

その一方で,民間企業がそれをどう活用するか?どのようなインセンティブが設定されるか?などに関しては,両省ともまだはっきりしません.予算的な問題と排出権取引制度導入がどちらもまだこれから...ということがその背景にはあるでしょう.環境省はその活用量に上限を設けることも考えているようですが,経済産業省はその点は触れていません.

気になる点は,いまだに政府の目標遵守に使う(償却する)ということと,企業が(なんらかの目的で)自己排出量をオフセットさせることの整理ができていないように感じられます.

最後に,「環境税・温暖化対策税」ですが,どうも環境省は(第2ステップからの)導入はあきらめたように読めますね.本当に入れることをもくろむのでしたら,第3ステップ時に導入できるように「タネを仕込んでおく」べきと思われますが...

いずれにせよ,どんどん2005年度は近づいてきます.民間セクターとしても準備期間が必要ですので,なるべく早い段階で方針を決めてもらいたいものです.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2004年9月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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