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Last updated: 2003.08.13  

CDM 新方法論について

5 月の 第 5 回 Meth Panel,6 月の 第 9 回 CDM 理事会において,CDM に関する新方法論の承認プロセスが はじめて審議されました.

結果は,Meth Panel の答申としては,申請された 14 (ベースライン方法論とモニタリング方法論を合わせると 28 の方法論) のうち,合格したのは NM 0007 のベースライン方法論のみ(これもモニタリング方法論は (b) ランク), △である (b) ランク以上のプロジェクトは,14 のうち 6 つという結果でした (http://cdm.unfccc.int/EB/Panels/meth/PNM_Recommendations/).

CDM 理事会は,(a)+(b)=(b) と低い方に合わせるという判断をし,今回,完全合格はありませんでした. その意味でも,かなり厳しい評価といえるでしょう.したがって承認は,次回 CDM 理事会に持ち越しです.

言い換えると,プロジェクト参加者にとって,プロジェクトそのものもそうですが,むしろ「CDM 化」という点に, かなりの労力を割かなければ,CDM となることはおぼつかないということです. 今回は,このインプリケーションを考えてみましょう.

結論としては,まず Meth Panel および CDM 理事会は,方法論に関して,それだけのクオリティーを 要求しているということです.すなわち,それ以上のクオリティーのものを提出する必要があるということですね. その意味で,プロジェクトの「CDM 化」は,かなり高いハードルであるということは間違いありません. しかし,少なくとも既存の承認された方法論がそのまま使えないプロジェクトに関しては, 新しい方法論を いちど CDM 理事会に承認してもらう必要がありますから,これは避けて通れないプロセスです.

それでは,どのようにすれば,このハードルを乗り越えることができるでしょうか? (これは,プロジェクト参加者側のコンサルタントにとっても重要なことです).

まず,合格した方法論を勉強することでしょう.自分の行おうとしているタイプのプロジェクトがあれば一番いいでしょうが, そうでない場合にも,合格したものは,それなりのクオリティーを保証されていることとなり,お手本とすべきものでしょう. それから,もし近いタイプのプロジェクトで不合格なものがあれば,それも参考になります. なぜ不合格で,それに対して Meth Panel や Desk Reviewer が,どのようなコメントを付けたか?という点ですね.

それから,Desk Reviewer が Meth Panel に提出する報告のフォームも,参考になります (http://cdm.unfccc.int/Reference/Forms/Methodologies/). 自分が Desk Reviewer になった気持ちで,ご自分の(あるいは同僚の作った)方法論のデキをチェックしてみてください. 最終的に,別のコンサルタントにチェックしてもらって,コメントをもらうのもいいことでしょう.

わたしは,PDD 作成と,方法論の Desk Reviewer という双方の仕事を行っています (NM 0007 はその意味では なんとか面目は保ったと言えるでしょうか). その観点から 今回提出された多くの方法論を参考にしながら,方法論の「中味」に関して, すこし参考となる意見を述べたいと思います.

PDD や方法論は,いわゆる文系の知見と技術系の知見の双方が必要となります. その意味で,(一人で双方の専門性をもっている人は別ですが)普通は,文系の人と技術系の人の合作となるはずです. そのような人たちが,集まって,ブレーンストーミングしながら つくりあげていくものと言えるでしょう.

たとえば,ベースラインのキーとなるのは,「追加性」すなわち「そのプロジェクトがベースライン自身ではない」という 論証ですが,これには 当該国の事情や経済計算といった文系の知見が必要です (これをきちんと論証している PDD が以外と少ないのです). 電力や蒸気・熱などがかかわってくる場合は,技術的知見が必要です.できれば,技術系の論文を書いた経験を持つ人が いた方がいいでしょう.

今回のラウンドで提出されたものでは,モニタリング方法論で (a) ランクはいませんでした. 機器の calibration,誤差伝搬法則,各排出源からの 各 GHG モニタリング精度の考察なども重要です. たとえば,ある炉があったとき,当然 CO2 はカウントしますが, N2O はどうでしょうか? 無視できるなら, きちんとその「理由」を記述する必要があります(キーとなる排出源からの排出量の誤差より 十分小さければ無視できるわけですね).

そのあたりも,PDD や方法論を書く人は,技術屋さんと議論し,きちんと理解した上で書かなければなりません.

温暖化固有の点として,IPCC の GHG Inventory に関する 1996 改訂ガイドラインと,Good Practice Guidance は, かならず一度チェックするようにしてください(シンクは今年末にできます). これは国レベルのインベントリー作成手法ですが,プロジェクトレベルで,これよりもラフな方法を用いているようでは, 話にならないといわれても仕方がありません.ただ,このガイドラインの基本的考え方は,できるだけローカルな値を, できれば実測する形で採用することを勧めており,デフォルト値はそれができない場合の「最終手段」であるという点も 理解が必要です (http://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/public/public.htm).

最後に,「方法論」と,「当該プロジェクトへの適用」は,別のものであるという理解が必要です. PDD の Annex 3 と 4 は「方法論」であり,プロジェクトの抽象化・概念化が必要です. 抽象化とは,平たく言えば,そのプロジェクトを「言葉で説明する」といえるかもしれません. 一度言葉にすることで,そのプロジェクトの「特徴」を抽象化することができます (場所などの固有名詞は使ってはなりません.むしろ,その国や地域の状況を,言葉で説明するということです. ローカルな規制や電力自由化の状況などですね).そうすれば,その「説明」に合致する「別の」プロジェクトも, (その方法論が承認された暁には)その方法論を使うことができるわけです.その際,適用条件を明示することが,大切ですね.

日本の企業は,技術的にはすばらしいものをもっているわけですから,きちんとした「方法論」や PDD を書き, 積極的に CDM というスキームを活用して下さい.論より証拠,まず,トライしてみましょう.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2003年 7月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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