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Last updated: 2003.08.13  

米国の温暖化政策について

世界最大の GHG 排出国である米国が,いま,どのような温暖化問題への取り組みを行っており, どのような方向性に向かおうとしているかは,(たとえ京都体制外にとどまるとしても)大きな影響力を持ちます.

米国ブッシュ・チェイニー政権は,2001 年 3 月の京都体制に組みしないという宣言, 6 月の中間報告を行いました.そして 翌 2003 年 2 月 14 日には,気候政策のベースと言える Global Climate Change Initiative を発表しました.これは,2001 年 3 月から継続してきた キャビネット・レベル・レビューの最終結論でもあります.

この Global Climate Change Initiative には,二種類のタイムスケールでの政権の考え方が記されています. そのひとつは,比較的短期,すなわち 2002〜12 年の 十年間の「目標(ゴール)」であり, よく知られた「原単位向上目標」を設定したわけです.これは,平均年率 2% で GHG/GDP 比率を 10 年間改善していくという目標です (18%/10年).1986 年以降,ほとんど改善してきていない日本の現状と比較すると, これはかなり大きな改善率ですが,その絶対水準は,もちろん,日本の水準からかなり劣ります. 一方で,「現状政策」で 年率 1.5% (14%/10年) 程度の改善が見込まれていますので,「追加的」には, 年率 0.5% 程度必要ということになります.

これが「容易」かどうか,という点は,必ずしも明らかではありませんが,政策策定のベースとなっている 数字を提供している Annual Energy Outlook によると,感度分析として試算されている Integrated High Tech Scenario でも 少し足りません.また,現状政策による改善率の 2/3 は 産業のソフト化に伴うもののようですので, 必ずしも「追加分」が容易というわけではないかもしれません.

Bush_1

ブッシュ・チェイニー政権は,この比較的短期的な目標を,企業の「自主的取り組み」によって達成しようとしています. 従来型(各企業個別)の Climate Leaders,日本型(業界単位)の Climate VISION という二つのイニシアティブが, 新たに動き出しています(前者は EPA,後者は DOE の管轄です).企業としては,目標年である 2012 年に予定されている レビュー後に,なんらかの mandatory な措置が導入されることなどを懸念し, これらの「自主的」取り組みを行ってきているようです.

一方で,「長期的」取り組みは,注目に値するところがあります.

短期的措置の導入に難色を示す現政権は,あまりコストを要せず,エネルギー供給や自動車産業の振興にも寄与する (ここでは何が主目的か?という議論はしません)長期的な技術開発 R&D や, (IPCC に懐疑的ということもあり)サイエンス面の充実には,かなり積極的です. 前政権と比較して,議会の合意を得ることも容易であり.予算も付きやすい状況のようです. 前政権から残っている人たちは,いまの政権では この分野に傾注することがベストであると考えているようですね.

Bush_2

温暖化対応という意味でも,上記のような長期的には排出トレンドを下向きにしていくことを, 一応目指しているということになっていますので(そうやってそれを実現するか?という点は示していません), その意味でも長期的対策は重視せざるをえないわけでしょう.

その真意はともかく,米国が「本気で」水素経済の実現に向けて動き出したということは, 将来のエネルギーおよび環境技術の方向性を決めるかもしれません.

京都議定書へ戻ってくるかどうかという話は,2004 年末の大統領選後にまた考えるとして,別の意味で, 米国の動きは目が離せないでしょう.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2003年 5月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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