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Last updated: 2005.10.28
2004年6月に開催されるCDM理事会の14回目の会合において,“Consolidated Methodology for Zero-Emissions Grid-Connected Electricity Generation from Renewable Sources” と “Consolidated Methodology for Landfill Gas Project Activities” (および “Consolidated Tools for Demonstration of Additionality” も?)のドラフトが審議されます.
これらのconsolidated methodologyは,CDM理事会の命を受けて,Meth Panelが作成したものです.ここでは,その意味を考えてみましょう.
Consolidated methodologyは,その名の通り,方法論を統合化したものです.比較的事例の多い電力グリッドに接続する再生可能エネルギーおよび廃棄物埋立地ガス回収プロジェクトに関し,いままで提出されてきた方法論(とくに承認されたもの)をベースに,それらを「とりまとめた」ものと言えるでしょう.そして,これらをオーバーライトするものとして位置づけられます(AMシリーズとなります).
今後も,このタイプのプロジェクトの数は多いと期待されますので,小規模CDMの「できあいの」方法論のように,AMシリーズをより使いやすくするという意味では,その意義は大きいと思われます.
その一方で,「必ずこの方法論を使わなければならないか?」という懸念も残ります.
元来,マラケシュアコード(この場合,CDM Modalities and Procedures部分)の精神は,(小規模CDMを除いて)方法論を「ボトムアップ」的に積み上げていこう,というものでした.すなわち,トップダウン的にCDM理事会が(たとえばベンチマーク指標などを用意して)「できあいの」方法論を用意するのではなく,プロジェクト実施者が各ケースに関して方法論を作成し,それを「判例」のようにデータベース化することで,標準化を図ろう,というものです.
今回のconsolidated methodologyの考え方も,基本的にはこのスタンスを踏襲したものになっています.言い換えると,Meth Panelの作業は,あくまで既存方法論の「統合化」であり,新しく(少なくとも大きな部分に関して)既存の提出された方法論を改変すべきものではない,ということです.
それでは,この方法論が使いにくい,(得られるクレジット量が少ないので)気に入らない,という人はどうすればいいのでしょうか?
ひとつは,この方法論の適用可能条件に当てはまらないプロジェクト(たとえば省エネプロジェクトによるグリッド電力代替)の場合.この場合には,もちろんこの方法論は使えませんので,(場合によってはこれらを参考にしながら)新しい方法論を作成する必要があります.
もうひとつは,これらの方法論の適用範囲内なのですが,別の方法論を作成したいと考える場合です.上記のマラケシュアコードの「精神」から判断して,これもOKのはずです.ただし,既存のconsolidated methodologyよりも「できがわるい」ものでは承認されないでしょう.「より正確な(一般にはこれはより多くのクレジットを生み出すことを意味します)」(場合によってはより「保守的な」)ものが,認められると思われます.特に,まだオープンになっていない「追加性」に関するペーパーは,現時点ではかなり改良の余地が残されており,最終的にオープンになるものの「でき」が気になりますが,よりきちんとした(あるいは同等の代替的な)追加性を示す論理や手続きを作成できるなら,それを用いることはできるでしょう.
そして,これらの新たに提出され,承認された方法論は,consolidated methodologyの一部となっていくわけですね.
もちろん,面倒であるなら,これらのconsolidated methodologyを,そのまま使うこともできます
以上の基本的考え方は,小規模CDMの場合でも,AMシリーズの場合にでも該当します.
それでは,consolidated methodologyを利用可能な場合,それを使うべきでしょうか?それとも新たに自分で方法論を作成すべきでしょうか?
それは,方法論承認に要する時間(や承認されない可能性のリスク)やコストと,新方法論を作成することによって得られる追加的クレジット量の大きさや追加性論証のしやすさなどとの「かねあい」で判断されるものでしょう.
方法論承認で追加的に要する時間は,本来はあまり問題ではないという判断もあり得るでしょう.なぜならば,プロジェクトのその他のプロセスは,そのあいだに「進めておく」ことが可能だからです(プロジェクトそのものを実施しておくことも可能です).新方法論が認められればそれを使えばいいし,認められなければconsolidated methodologyを使えばいいわけです
一方で,方法論がすこし異なれば,得られるクレジットの量がかなり(およそ数十%程度)異なる場合も多いでしょうから,その意味では,ベターな方法論を作成する意義もあるわけですね(わたしなどは「できの悪い」(特に論理的整合性がないのになぜか承認されてしまった)方法論などは使いたくない!などと思ってしまう方ですが...).
いずれにせよ,consolidated methodologyよりできが悪ければ仕方がないわけですし,これらは,きちんと精査しておくべきでしょう.
[この文章は,ナットソースジャパンレター 2004年7月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]