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Last updated: 2005.10.28
産構審,中環審における議論などから,2005年中には,2008年以降の国際的温暖化問題への取り組みに関する 枠組みの国際交渉が始まることになっている...と思っている人がいるような気がします. これはある意味で正しいのですが,京都議定書で規定されているものは,「先進国の数値目標の見直し」の点だけです. すなわち,発展途上国の目標設定などではありません.
その意味で,まず今のうちに議論をはじめるべき点は,先進国の目標をどのようにして設定したらよいか?という点であり, 発展途上国の目標の議論などは,(議論することの意義はおおいにあるのですが)ファーストプライオリティーではないような 気がします.
このような議論を行う上で,整理しておかなければならないのは,以下のようなポイントです.
これらを整理し,どのような視点での議論を行っているのか明確化しなければ,議論はすれ違いになってしまうでしょう.
わたし個人は,京都議定書をどのように作成するか?という議論の中から,このようなことをずっと考えてきました.おいおい,この場でも紹介していきたいと思っています.みなさんも,ぜひ,どのような枠組みが,将来の国際的な温暖化への枠組みとして望ましいか,地球益という立場から,よく考えてみてください.ただし,実現可能性もきちんと考慮しなければなりません.
せっかくですので,ひとつのアイデアを考えてみましょう.
わたしは,2013年からの目標設定交渉において,同時に2030年の先進国全体の目標を設定することが望ましいと考えています.各国目標としてのブレークダウンは必要ありません.
上述のように,これはまさに将来の地球環境への負荷水準を決めることにほかなりません.言い換えると,現世代の政策担当者が,将来世代に向けて環境的側面からのコミットメントを行うこととなります(Burden sharingを行わないことで,純粋に環境面を考えることができるわけです).将来世代に向けての現世代からのメッセージというわけですね.
加えて,これは政策担当者側から,企業へのメッセージでもあります.すなわち,将来(四半世紀後)には,この程度の排出水準の社会になる,というメッセージでもあるわけです.企業にとっての最大の障害は,どのような将来になるか(どの程度の規制水準となるか)不透明なことです.この不透明性を小さくし,明確な将来の方向性を示すことで,企業はその技術開発や,設備更新時期における投資において,明確な方向性を持つことができ,前もってさまざまな対策を打つことができるわけです.日本のような技術を持った国の企業にとってのメリットは非常に大きなものとなるでしょう.
上記は,ひとつのアイデアにすぎませんが,このような「知恵」をいまのうちに考え,用意しておくことで,単に経済的コストや政治的受容性などを論じるのではなく,どうやれば前に進んで行けるか?というベースを用意することができるでしょう.みなさんも,ぜひ,いいアイデアを出してください.
[この文章は,ナットソースジャパンレター 2004年 5月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]