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Last updated: 2005.10.26 

中環審温暖化対策税制提案を考える

中央環境審議会,総合政策・地球環境総合部会・地球温暖化対策税制専門委員会が,今年の8月29日に提示した「温暖化対策税制の具体的な制度の案?国民による検討・議論のための提案」に対するパブリックコメントの期限が,11月28日に迫ってきました(みなさんもパブコメを出してみましょう).今回は,この提案のエッセンスに関して考えてみましょう.

提案の概要としては,炭素トンあたり3,400円という低率の税金をエネルギー上流段階に課し,その1兆円程度の税金を温暖化対策の補助金に充てる,というものです.

いろんな論点があるのですが,ここでは,2点に話を絞ってみましょう.

第一に,この提案における温暖化対策税は,どの部門にも課されると想定されているようですが,提案では, 他の政策措置との比較や,ポートフォリオの組み方に関しては,なにも言及されていないと言うことです.

わたしは,産業部門に関しては,課税措置よりも排出権取引制度の方がベターであると考えていますが, このような他の手段と比較した検討が行われた上で, 税金の方がベターであるという検討がなされているならいいのですが,その比較検討は示されていません.

加えて,欧州の場合の炭素税などの経験からも明らかなことですが,炭素税などの制度設計の一番重要な点は, エネルギー多消費産業に対して「税の軽減措置をどのように導入するか?」です. この方法によって,CO2削減効果という点も大きく影響しますし,もっとも強い反対をするセクターが提案を受け入れられるかどうか, という判断が異なってきます.この点で具体的な案が提示されないのでしたら,彼らは反対するしかないでしょう.

第二点目は,もっとも重要なポイントなのですが,CO2排出削減効果がどこから来ているか?という点にかかわります. この提案の妙は,かなり低率の課税にもかかわらず,その税収を低コストの対策から順番に充てることによって, 一桁大きな炭素税と同じCO2削減効果を持たせることができる,という点です.言い換えると,CO2削減効果は, 課税による価格効果ではなく,補助金がうまく機能できるか?という点に集約されます.

わたしは,このアプローチ自身は,けっして悪いと思わないのですが,この提案の難点は, そのもっとも寄与の大きな補助金に関する制度設計がまったく示されていないということです. AIMのようなボトムアップ型モデルでは,低コスト対策から順番に財源を充てる… ということが簡単に想定できますが, 問題は,それを具体的な政策措置としてどう設計するか?です.

一般に,補助金は,その非効率性が指摘されます.低コストなものから,あるいは別のクライテリアの場合にでも,政府はそのための「情報」を,十分に知っておく必要がまずあります.そして,その情報を活かすための制度を設計するわけですね.一兆円とはかなりの額です.財源を求めて各省庁や企業などの有象無象が群がってくるでしょう.その中で,この貴重な財源を,効率的に無駄がないようにCO2削減に充てるためにはどうすればいいのでしょうか?

もっと端的に言えば,まずそのような巨大な財源は環境省が扱うには大きすぎるでしょう.とはいえ,経済産業省のエネルギー特別会計(ほぼ一兆円あります)を単純に2倍に拡大すればいいのでしょうか?国土交通省や林野庁なども狙ってくるでしょうね.政治的駆け引きの世界が展開されることは明らかでしょう.このような中で,きちんと効果的に,補助金が使われると主張するには,そのための具体的提案が必要です.それがあってはじめて,国民はこの提案に賛成したり反対したりという判断ができるわけです.なにせ,この部分が,CO2排出削減の根幹部分ですから.

まとめますと,この提案には,いくつか注目される点はあるものの,近い将来に導入される具体的な提案にはまだ遠いと言うことです.環境省は温暖化対策税の議論をもう何年も行っているのですが,当初からなかなか前に進んでいっていないという印象ですね.キーとなる部分をしっかり認識した上で,その部分(この場合は軽減措置の導入方法と,補助金をどのように効果的に用いるか?)の「具体的」提案をする時期に来ているのではないでしょうか?

一方で,みなさんがこれらの点に関するいいアイデアをお持ちでしたら,ぜひ,何らかの形で(たとえばパブコメとして)提案されてみてはいかがでしょうか?私自身の提案は,すこし前のものですが,IGESとClimate ExpertsのWebに出ています.よろしかったら,参考にされてみて下さい.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2003年 12月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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