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Last updated: 2003.11.07
CDM の PDD を読んでいると,いくつか面白い現象に気が付きます.たとえば, 「IPCC の GHG インベントリー・ガイドラインのこのデフォルト値を用いている.文句あるか?」的な表現が目に付きます.
英国の国内排出権取引制度では,各種の排出係数は,どの値を使うべきか?という点を 指定されています. また CHP (コジェネ) の場合の CO2 排出を,どう電力生成と熱生成に割り振るか? などという点に関して, この方法をとるべし,ということが指定されています.すなわち,規制当局が,用いるべき方法を事前に指定し, その場合,その方法を選択することが正であり,より正確な方法があったとしてもその方法を採ることは (普通は)間違いになるわけです.
一方で,CDM の場合,依って立つアプローチ方法が全く異なります.すなわち,規制当局側(この場合CDM理事会)が, 事前に使うべきアカウンティング方法を指定せず,プロジェクト実施者がその方法を「作成」し, その方法の「正当性」を主張します.そしてその主張が正しいと,規制当局や第三者が認めた場合に限り, その方法が使えると言うことになります.
したがって,IPCC の GHG インベントリーに関するガイドラインやグッドプラクティスは 当然知っておく 必要があるでしょうが(国レベルインベントリーよりもプロジェクトベースの排出量アカウンティングが不正確では 困りますね),CDM 理事会がこれを使うべしと指定していない場合(実際に指定していないわけですね), プロジェクト実施者は,それを使うことの「正当性を論述」しなければなりません (ちなみに,IPCC のガイドラインも,デフォルト値よりもなるべくローカルな値を採用することを勧めています. その意味で,デフォルト値はラストリゾートであり,できたら実測値を用いることがのぞまれます).
より正確な方法があれば,そしてそれが排出削減量の中でもっとも大きな寄与を持つ排出源にかかわるものであれば, 普通はそれを用いるべきでしょう(マイナーな寄与でしたら,精度を上げる必要はありません). 一方で,コストの問題その他から,IPCC などの方法を用いる場合には,それが「本当の」値から, どれくらいずれているか?というような推計が(本来は)必要となります.
一方で,いったん承認された方法論を用いることができる場合には,その方法と「真の」値との「誤差」などを, とくに考える必要性はないでしょう.その方法論が本当に適用可能か?という点に議論は集中するはずです.
ここで,conservative という概念を考えてみましょう.しばしば見かけるのは, 「この値はこのような conservative な推計を用いている」と,誇らしげに長所として挙げている PDD です. これは,よく考えればおかしなわけで,正確なあるいはリーズナブルな手法にまで絞り込むことができたなら, (環境に donation する気がない限り)わざわざ conservative な方法を採る必要はないはずですね. 言い換えると, きちんとした論理を展開できなければ,conservative な方法を採らざるを得ないわけです. すなわち,conservative な推計とは,本当は「欠点」に分類されるものなのでしょう.
[この文章は,ナットソースジャパンレター 2003年 10月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]