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Last updated: 2007.01.01 

個人や家庭レベルの排出権取引のすすめ

排出権取引制度の「本質」とは何でしょうか?国が足りなくなった量を,どこかから購入して来るという制度なのでしょうか?

わたしは,排出権取引制度の最大の意義は,GHG削減に金銭的付加価値を与え,

「それぞれの意志決定主体が,いろいろな行動を採る際に,つねにGHG削減をコスト的に意識することができ,行動にうつせる制度であること」

であると思っています.その意味では,コストや実際に削減を行う主体でない国が不足分を購入することができる… ということにのみ役割を持たせるということは,その本質を見誤っていると思っています.

ここでの意志決定主体とは,通常はEU ETSのような,企業(の担当者)であったりします.ただ担当者といっても,単純に環境問題の責任者ではなく,生産計画をたてる者,財務経理を担当する者,原料調達を行う者… なども大きな関係があるはずです.環境問題の枠内に矮小化せず,社としてのオーバーオールな意志決定の中で,合理的な意志決定を行うことができる制度であるわけですね.

企業の生産計画,原材料や燃料の調達計画においては,原油価格動向などの外部変動要因を考えながら,たとえば自家発の比率をこの程度にして,あとは外部電力を購入しておこう,為替の状況からこれから半年間は生産を抑えておこう,などという判断を行うこととなると思います.排出権取引制度を活用するとは,その意志決定の際の変動パラメタに排出権価格が入ってきます.そして,GHG削減のためのコストも,意志決定の中に内部化されるということですね.もちろん,自社削減以外のオプション(排出権の売買)も,オプションに入るわけです.

さて,上記は企業においての排出権取引の考え方です.

一方で,タイトルの個人や家庭レベルにおける排出権取引の活用とは,どのようなイメージなのでしょうか?

ひとつは,国(の可能性は低いでしょうが)や,地方自治体が,民生部門対策のひとつとして,その地域の住民相手に,排出権取引制度を導入すると言うことです.単位は1 kgCO2eや10 kgCO2e程度でしょうか.地域通貨という制度を導入している自治体があるかと思いますが,同じようなイメージですね.「削減量」ではなく,「排出量」をベースにした制度であるべきでしょうね.排出権というより,エネルギー消費権(券?)といったような感じかもしれません.せっかくですので,CERなどの京都議定書の排出権との互換性をもたせたいものです.そうすれば,どうしても総量が増えてしまう状況にも対応可能ですね.

このような場合,個人を対象とするなら,たとえばお年寄りや子供はどうするか?などといった疑問が湧くかもしれません.これらは初期割当方法としてどのようなものを設定するか?という問題だと思います(取引可能性とは別の次元ですね).あるいは,これらの主体は最初からスコープ外とすることも可能でしょう.

いずれにせよ,この制度の意義は,まさに個々人が,常日頃,電気料金,ガソリン代,電車賃,… などを意識して生活するのと同等レベルで,GHG排出という視点も,その意志決定に含めることができるということです.チケットのディスカウントストアで排出権を扱うようになったら本物と言えるかもしれませんね.

それでは,このような特徴は,自治体などの規制フレームワークがないと機能しないのでしょうか?地域通貨などもボランタリーな活動を支援する目的でできているものがあると思います.排出権だって同様でしょう.

すなわち,たとえば「わたしは今回のヨーロッパ旅行をカーボンニュートラルにしたい」と思う人がいた場合,それを可能とすることができるわけです.そんなことを望む(=付加価値を見いだす)人はいない… かもしれませんが,それは社会的価値観の変遷のなかでどうなるかわかりません.インターネット時代は多様な付加価値が許容される時代ですから.しかし,少なくとも,なんらかの受け皿は必要かもしれませんね.

このように,GHG削減に「新しい付加価値」が形成され(規制による場合+自由意志による場合がありますね),常日頃から,どのような程度であるにせよ,個人の自由意志で,それに参加できるような社会になることを願っています.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2006年9月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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