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Last updated: 2007.01.01 

日本の排出権調達戦略について

NEDOによる「日本政府の」クレジット買取制度が動き出します.どうもお役所の高飛車な態度が見え隠れしますが,実際にふたを開けたときに,どうなるかは見物ですね.

さて,今回は,日本政府としての,京都議定書の目標を達成するための排出権調達戦略をすこし考えてみましょう.

わたしが意志決定者でしたら,EUのように,国内の排出源の一部に「議定書遵守の責任」を分担してもらいます.言い換えると,キャップ・アンド・トレード型排出権取引制度を導入するわけですね.そうすれば,カバーした排出源からの排出量は一定の枠内になることが保証されます.もちろん,その排出源が目標より排出量が多く排出したければ,その分は,どこかから調達してくればいいわけですね(逆に調達しさえすればどれだけ排出してもよいことになります.自社の削減の限界コストと排出権調達コストを比較して判断すればいいわけですね).日本の責任は,カバーしない部分(主として民生/運輸部門)だけで済むことになります.

日本はすくなくともいまのところ,そのように「企業に責任の一部を分担してもらう」ことを明確化していません.言い換えると,政府が自ら,日本の排出量「全体」に関して直接責任をもつということでしょう.もちろん,年間2,000万トン「以上」ショートした場合(まず間違いなくそうなるでしょうが),その超過分も政府責任分となるはずです(その「覚悟」があるかどうか確認していませんが).

すでにCER/ERUは,各国政府間交渉や協力で「融通」されるようなものではなく,ビジネスの論理で動いています.言い換えると,ビジネスの分野で,関わっている人(特に日本や途上国側のCER/ERU供給者)が,どのような考え方をするか?に,合わせる必要があります.NEDOの買取制度が成功するかどうかは,ひとえにその点に対してフレキシブルに対応できるかどうか?にかかっているでしょう.

そのためにベストな方法は...そのような「感覚」をもったビジネス経験者を責任者に据え,そのひとにかなりの裁量を任すことでしょうね.そうでなければ,やたら高い買い物を強いられるか,ほとんど量的に確保できないか...ということになりそうです.

日本の排出権調達戦略は,かならずしもCDM/JIのみではありません.GISもあるわけです.世銀に任せるだけでなく,きちんと人を出してかかわらないと,これらの機会もどんどん欧州に奪われていくでしょう.排出権取引も,GISとからめるかどうかも含めて,スコープに入れておくことが重要です.

最大の懸念事項は,ロシア「政府」によるきわめて政治的な道具として用いられることです.いいかえると,ロシアのホットエアー(自然排出減による余剰分)にいかに依存せずに済むか?が,最大の関心事です.市場価格で買えたらいいのですが,ほかの手段がなければ(市場に玉がなければ),非常に高い買い物を強いられるでしょう.北方四島やエネルギーの問題などと絡めてこられるとさらに困ったことになるかもしれません.

ロシアを相手にする場合,プロジェクトベースの場合は,それほど変なことは起きないでしょう.その意味で,3/16で方向性が出てきたJIを進めることはいいアプローチでしょう.民間企業や地方政府へアプローチすることも重要でしょう.

それから,ウクライナを「対抗馬」として,力を入れていくことが重要です.巨大なプロジェクトベースの削減量ポテンシャルもありますし,GISや排出権取引も2008年からできる可能性もあります(適格性審査に合格する可能性はロシアより高いと思います).まだ欧州勢もあまり入っていないという点もいいですね.ロシアほど政治的に動いてこないでしょうし,ロシアからはいじめられ,対抗意識も強いでしょう.ちなみに,ウクライナのホットエアーの量は(これはJIプロジェクトの「外数」です)中国のCDMポテンシャルに匹敵します.

もちろん,CDMをできるだけ動かしていくことも重要です.同じプロジェクトを行うのでも,一年間遅れれば,その分,2012年までのCERの量は20%くらい減るわけです.

このようなことを「全体的に」考えて戦略設計し,行動することができれば,世界全体で排出権は「余ってくる」でしょうから,いろいろなことが低コストでできるはずですね.逆にそれができなかった場合,かなりの税金をつぎ込まなければならなくなります.そうなったら,誰がその責任をとるのでしょうか?企業なら株主訴訟の対象となるような状況かもしれませんね.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2006年 4月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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