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Last updated: 2005.10.29
排出権は,GHG削減という行為に対して,金銭的付加価値を生じるものですね.経済学という視点からみると,これは,いままで市場経済の「外部」にあった「価値」を,市場経済の中にとりこむことを表しています.その意味では,GHG削減以外にも,まだ市場経済に乗っていない価値は世の中にたくさんあります.
ここでは,森林の持つ価値という側面からみてみましょう.
森林は,上手のような多様な付加価値を持っています(バイオマス供給元もこの場合,木材資源供給に分類するとします).しかしながら,その大部分は,市場に乗っていません.言い換えると,メリットを受けている人がそのコスト負担をしているわけではないわけです.このような付加価値が市場経済に乗っていないことは,一部では補助金などの形態で補完されていますが,かなり不完全なものでしかないのが現状でしょう.
このことを念頭に置きながら,温暖化対応の視点から森林を考えてみましょう.
ご存じのように,CDMによる付加価値(tCER or lCER)だけでは,なかなか発展途上国において新規植林・再植林系のプロジェクトは動いていきません.そこで考えつくのは,「その他の付加価値」を,どうやってプロジェクトの中にデザインしていくか?という点です.上記の木材資源,バイオマスエネルギー資源の供給や,場合によってはエコツーリズムなども含まれるでしょうか.具体的なアイデアの実現化が望まれますが,できることなら,ホスト国や国際的な制度的バックアップがあるといいですね.
CDMは途上国で行われるため,なかなかホスト国側の制度がその他の付加価値を認める(バックアップする)ということは期待できないかもしれません.一方で,先進国ではそれがより容易になるはずです.
日本では,「バイオマスニッポン総合戦略」があり,また温暖化の観点からもシンクの吸収量で3%分以上を確保しようとしています.ただ,バイオマスや森林の持つ「価値」を評価し,それを市場経済に載せるというようなアプローチは,あまり考えられていないようです.むしろ,価値は役所が判断し,従来型の「補助金」という形でサポートする...というような形態が好まれるようです.
政府がすべての点を指図し,とくに補助金を用いて対策を進めようとするアプローチは,利権の問題などの温床にもなりかねませんし,なによりも政府にそれを的確に行う能力があるか?またそれぞれの価値をどのように判断しているのかが不透明になる,などの限界が見えてきたのではないでしょうか.役所間の壁も大きいでしょう.
したがって,このGHG削減が市場価値を持つことになる機会を利用し,その他の付加価値の市場化にも取り組んでみたらいかがでしょうか?どのような付加価値があるか?を同定し(これを認識し合うことが重要です),それを市場価値で考えるとどのようなものか?を推計します.そしてそれを誰がどのような形で負担するか?場合によっては取引制度などの導入も可能でしょう.
すでに民間では,持続可能な森林経営というコンテクストから「森林認証」などの活動が動き出しています.そのままで十分であれば問題はないのですが...
[この文章は,ナットソースジャパンレター 2005年4月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]