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Last updated: 2002.11.23  

CDM プロジェクトデザインドキュメントについて

CDM のプロジェクトデザインドキュメント (CDM-PDD) のフォームが発表されました. すでにいくつかの企業は,Operational Entity としての名乗りをあげており,2003 年は CDM元年 (同時に京都議定書発効の年)となることは,ほぼ確実でしょう.

CDM-PDD は,

といった構成になっています.

この中で,もっとも重要なのは,B および Annex 3, 5 に関するところでしょう. ベースライン方法論として,既存のリストに該当するものがなければ,新しい方法を開発し, それを Annex 3 に記載する必要があります(なお,ベースラインを設定する際に設定するプロジェクトバウンダリーは, モニタリングにおいても同じものを使うことになります).

ここで重要なのは「その方法論が適切であること」すなわち,「プロジェクトがなかりせば,というシナリオを 『合理的(リーズナブル)に』説明できること」です. たとえ同じような先駆的なプロジェクトが存在する場合においても,そこで用いられた方法論が, 当該プロジェクトにおいても用いることが適切であるかどうかは,自明のことではありません. この場合,実際はまったく同じ外的状況であることはないため,応用問題として,方法論に修正が必要であると想定されます.

そして,その採用した方法論は,Operational Entity の厳しい審査と,パブリックコメントに耐えうるだけの 論理的頑健さを持っていることが求められるわけですね.とくに Operational Entity とのキャッチボールは重要です. Operational Entity は,あとでこの方法論が不適格と判断されれば,足りない分を自分が調達する必要があり, 場合によっては資格剥奪に繋がりかねないわけですから,保守的に考えようとするでしょう.

CDM プロジェクトにかかわる取引コストは,プロジェクトあたり,数万〜数十万ドルと試算されています. そのうち,ベースラインスタディーに要するものは,かなりの大きさ(数万ドル〜20 万ドル程度)にのぼるという試算が 多いようです.Operational Entity に支払う費用は,日割りされるようですから, 事前にどれだけ堅固な論理を構成しておけるかが,コスト削減のために重要でしょう.

CDM-PDDにおいては,このように,ベースラインやプロジェクトバウンダリーの選択の部分をどれだけしっかり書き込めるか, 言い換えると,なるほどと思わせるシナリオの構築と,その裏付けとなる情報が必要となります (PDD には,ベースライン作成者の連絡先も記載しなければなりません).

例としては,発電にかかわるプロジェクトで,ホスト国の電源開発計画が影響を及ぼす場合もあるでしょう. ただその場合でも,その計画のフィージビリティーのチェックも必要でしょうし,おなじグリッドでつながった 他の発電所の運転状況などのデータも必要となるかもしれません.もっとも,データの入手可能性や, 数値化がほとんど非現実的なものの場合,他の合理的な近似方法を考える必要があります.

そのような意味からも,改修プロジェクトなら過去の実績値をそのままベースラインに選べる, といった単純なものではないと思った方がいいでしょうね.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2002年 10月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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